うちは(Ⅰ)だけ?それとも(Ⅱ)も届け出できる?ベースアップ評価料を3ステップで即チェック
[2026.05.26]
令和8年(2026年)診療報酬改定
うちは(Ⅰ)だけ?
それとも(Ⅱ)も届け出できる?
ベースアップ評価料を
3ステップで即チェック
それとも(Ⅱ)も届け出できる?
ベースアップ評価料を
3ステップで即チェック
スタッフが多いクリニックほど差が出る「(Ⅱ)」の仕組みを徹底解説
「ベースアップ評価料の届出、様式95を出せばいいんですよね?」——外部事務長として多くのクリニックを支援していると、よく聞かれる質問です。
答えは「クリニックの規模によっては、様式96も必要かもしれません」。令和8年度改定でベースアップ評価料の体系が見直され、スタッフ数が多く外来診療が中心のクリニックでは、「ベースアップ評価料(Ⅱ)」を追加で届け出ることで、賃上げ財源をさらに確保できる仕組みが設けられました。
この記事では「(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い」をわかりやすく整理し、後半のかんたん判定ツールで自院が(Ⅱ)を届け出できるかどうかを即確認できます。
まず整理:(Ⅰ)と(Ⅱ)は別々の加算です
よくある誤解から先に解消しておきます。ベースアップ評価料の「(Ⅰ)」と「(Ⅱ)」は、「どちらか一方を選ぶ」ものではありません。(Ⅱ)は(Ⅰ)の上に追加で届け出るものです。
| ベースアップ評価料(Ⅰ) | ベースアップ評価料(Ⅱ) | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 全クリニックが届け出る基本の加算 | (Ⅰ)だけでは賃上げ財源が不足するクリニックが追加で届け出る加算 |
| 算定タイミング | 初診料・再診料などに上乗せして算定 | (Ⅰ)と同様、再診料などに上乗せして算定 |
| 届出様式 | 様式95(+継続賃上げの場合は様式98) | 様式96((Ⅰ)の様式95と合わせて提出) |
| 主な対象 | 全ての診療所 | 外来手術・透析などでスタッフ数が多く、(Ⅰ)だけでは財源が足りないクリニック |
💡 入院ベースアップ評価料との関係
入院ベースアップ評価料を届け出ている医療機関は、(Ⅱ)を届け出ることができません。(Ⅱ)か入院ベースアップ評価料のどちらかを選ぶ必要があります。無床診療所の場合は入院ベースアップ評価料は関係ないため、この点は気にしなくて大丈夫です。
(Ⅱ)を届け出できる条件——「1.6%ライン」がカギ
(Ⅱ)を届け出できるかどうかは、次の計算で判定します。
判定式
(Ⅰ)の月額算定見込み総額
÷
対象職員の月額賃金総額 × 100
÷
対象職員の月額賃金総額 × 100
この比率が 1.6% 未満
→ (Ⅱ)を届け出できる
→ (Ⅱ)を届け出できる
つまり、「(Ⅰ)で入ってくる賃上げ財源が、スタッフへの給与総額の1.6%分に満たない」場合に、(Ⅱ)で追加の財源を確保できる仕組みです。
具体例で考えてみましょう
【クリニックA:小規模・スタッフ少なめ】
初診50件・再診500件 → (Ⅰ)月額算定見込み:約28,500円
スタッフ3人・月額賃金総額:90万円
比率:28,500 ÷ 900,000 × 100 = 3.2% → (Ⅰ)のみ
【クリニックB:外来が多い・スタッフ多め】
初診100件・再診2,000件 → (Ⅰ)月額算定見込み:約97,000円
スタッフ10人・月額賃金総額:700万円
比率:97,000 ÷ 7,000,000 × 100 = 1.4% → (Ⅱ)も届け出可
初診50件・再診500件 → (Ⅰ)月額算定見込み:約28,500円
スタッフ3人・月額賃金総額:90万円
比率:28,500 ÷ 900,000 × 100 = 3.2% → (Ⅰ)のみ
【クリニックB:外来が多い・スタッフ多め】
初診100件・再診2,000件 → (Ⅰ)月額算定見込み:約97,000円
スタッフ10人・月額賃金総額:700万円
比率:97,000 ÷ 7,000,000 × 100 = 1.4% → (Ⅱ)も届け出可
💡 こんなクリニックは(Ⅱ)を要チェック
外来手術・透析・検査が多くスタッフ数が多い無床または病床数が極めて少ない有床診療所。診療件数の割にスタッフへの給与支払い総額が大きいクリニックほど、1.6%ラインを下回りやすく(Ⅱ)の届出対象になりやすいです。
補足:「注5(高い点数)」とは
(Ⅰ)・(Ⅱ)それぞれに、「継続賃上げ実施クリニック」向けの高い点数(注5)が設定されています。
| 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ) | 初診時 | 再診時 |
|---|---|---|
| 注5あり(継続賃上げ実施) | 23点 | 6点 |
| 通常区分(注5なし) | 17点 | 4点 |
⚠️ 注5の算定に必要な様式はクリニックの状況によって異なります
【R8.3月以前から届け出ていたクリニック】
様式95のチェック欄で「①」を選択するだけでOK。様式98は不要です。
様式95のチェック欄で「①」を選択するだけでOK。様式98は不要です。
【R8.4月以降に新規で算定を始めるクリニック】
R6年度〜R8年度の賃上げ実績(計5.5%、事務職員は8%相当)を示せる場合に注5を算定できますが、その実績を証明するために様式98の追加提出が必要です。
R6年度〜R8年度の賃上げ実績(計5.5%、事務職員は8%相当)を示せる場合に注5を算定できますが、その実績を証明するために様式98の追加提出が必要です。
🔍 かんたん判定ツール——3ステップで即チェック
月間診療件数と対象職員の給与総額を入力するだけで、自院が(Ⅰ)のみか(Ⅱ)も届け出できるかを即判定します。
令和8年(2026年)6月〜
ベースアップ評価料(Ⅱ)届出可否 判定ツール
3ステップで即判定
STEP 1 / 3 月間診療件数を入力
先月1か月の初診・再診の件数を入れてください
レセプトの算定回数でOK。おおよその数値でも構いません。
月間初診件数
件 / 月
月間再診件数
件 / 月
※ 判定結果は目安です。正確な届出可否は様式96の計算結果で確定します。
よくある質問
Q. (Ⅱ)を届け出ると何が増えるの?
(Ⅱ)を届け出ると、再診料などに(Ⅰ)とは別に(Ⅱ)の点数も上乗せされます。スタッフへの賃上げのための財源が増える仕組みです。ただし増えた収益は必ずスタッフの賃上げに使うことが前提です。
Q. 毎年届け直す必要はある?
(Ⅱ)の区分は毎年3・6・9・12月に算定回数と賃金総額を再計算します。区分に変更がある場合は算出を行った月内に届け直し、翌月から変更後の区分で算定します。ただし、前回届出時点と比較して算定回数・賃金総額・区分判定値のいずれの変化も1割以内の場合は変更届は不要です。
Q. 令和8年6月に間に合わなかった場合は?
6月1日からの算定には5月中の届出が必要です。間に合わなかった場合でも、届け出た翌月から算定を開始できます。今からでも届出の準備を進めることをおすすめします。
まとめ
1
(Ⅰ)は全クリニックが届け出る基本。(Ⅱ)は(Ⅰ)だけでは賃上げ財源が足りないクリニックが追加で届け出る補完的な加算
2
(Ⅱ)の届出可否は「(Ⅰ)の月額算定見込み ÷ 月額賃金総額 × 100」が1.6%未満かどうかで判定。スタッフが多いクリニックほど該当しやすい
3
継続賃上げ実施クリニックは注5で高い点数を算定できる。既存届出クリニックは様式95のみ、新規算定クリニックは様式95+98が必要。(Ⅱ)を届け出る場合は様式96も追加
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著者
大久保 直博
株式会社C&D Hub 代表取締役社長
クリニック・歯科医院への外部事務長サービスを展開。診療報酬改定への実務対応から採用・経営改善まで、院長の右腕として多くの医療機関を支援している。
※本記事は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。実際の届出内容については、厚生労働省「ベースアップ評価料等について」および地方厚生局の最新様式・通知でご確認ください。
